「浅草前川印傳」は鹿革を使って作られる印伝を主に扱い、鞄や財布などの商品を製造しています。
柄がとても豊富で、伝統文様を用いた個性的な和柄や、パッチワークによる華やかなデザインが魅力的です。
今回は「浅草前川印傳」三代目当主である前川来人様にインタビューの機会を頂戴しました。
- 1958年 初代 前川 昭太郎さんが前川商会を創業
- 2004年 二代目当主 前川 典央さんが有限会社前川皮革工芸に法人化すると共に、浅草店開業
- 世界中の人々が集まる観光地浅草を拠点に、職人直営店だから出来る遊び心と、ひとあじ違った作品を常に意識して伝統を守りながらも新たな挑戦を続けています
印伝の魅力、そして「浅草前川印傳」が作り出す華やかな商品の魅力が伝わるストーリーです。
ぜひご覧ください。
「浅草前川印傳」が印伝を扱い始めたきっかけ
「1958年に祖父の前川昭太郎が前川商会という会社を創業したのですが、当時は袋物を爬虫類の革で作っていました。それが始まりです。」
「前川印傳」はそのブランド名の通り、鹿革から作られる印伝を主に扱うブランド。
もともとは爬虫類の革を扱っておりましたが、ある時から印伝を扱うようになったようです。
「そのあと父の代で印伝をメインに販売するようになりました。20年ちょっと前の話になりますが、爬虫類のバッグがなかなか売れなくなってきたんです。そのとき父が印伝という素材に注目して、印伝で袋物を作るようになりました。当時は爬虫類と印伝の割合は半分半分でしたが、次第に印伝の方が人気になってきました。そこで完全に印伝専門店にしようということで、『前川印傳』というブランドができました。」
「もともと店舗はなかったのですが、昭太郎が蔵前で修行をしていた当時から浅草で直営店を構えるのが夢だったので、20年前に『印伝専門店前川印傳』として浅草にお店を出しました。それが今まで続いているのです。」
爬虫類のアイテムが売れづらくなってきたとき、お父様が印伝に注目しました。
それが転機となり、今では印伝のアイテムを幅広く取りそろえるブランドとなったのです。
「うちは一点物が多いのが特徴ですね。柄にしてもパッチワークにしても、少ない点数で色々なものを見せていくというのが特徴です。なのでお店に足を運ぶたびに毎回ガラッと品ぞろえが変わっているような、そんな展開ができています。」
「前川印傳」では柄を豊富に取り揃えていますが、それらのほとんどが一点物です。
またパッチワークのデザインも様々ですが、それもほとんどが一点物。
一つ一つの柄、デザインの点数が少ないからこそ、多くの種類を展開できます。
次々と新しい商品が作り出されるため、足を運ぶたびに品ぞろえが一新されているほどです。
「あと、うちはものづくり職人のお店なのでお店に作業場があるのです。なのでスタッフもただ売るだけではなく、お客様がいないときには作業していることもあります。それをお客様が見学できるような形にしていますね。なのでちょっとした修理なら、その場でパッと直せるような体制になっています。売るだけではなく、作りながら、作業しながらというのがうちの特徴ですね。」
「前川印傳」は店構えにもこだわりを持っています。
ただ商品を売るだけではなく、そこでは職人が仕事をしている様を見ることができるようになっているのです。
ものづくり職人のお店ならではの特徴を活かしたお店作り。
ぜひ実際に足を運んで、楽しんでみてください。
\ ものづくり職人ならではの店づくり /
「浅草前川印傳」がこだわる、鹿革の魅力とは
「前川印傳」三代目当主の前川来人さんに、鹿革の特徴についてお聞きしました。
「前川印傳では鹿革を主に使用しています。ところどころカチッとさせたいところは牛革を使うこともありますが、基本的に鹿革を使います。鹿革の産地には『ニュージーランド・オーストラリア・北米・中国』の4種類があり、それぞれ特徴が異なるのです。肉厚だったり水分量が多かったりと性質が違うので、制作するアイテムによって使い分けていますね。」
鹿革は産地によって少しずつ特徴が違います。
それらの特徴を活かしながら、制作するアイテムによって産地を使い分けているとのこと。
また鹿革は数ある革素材の中でも特に使い心地が良いことが特徴です。
「鹿革の特徴は柔らかくて軽いところですね。革製品ってどうしても重たくなってしまうので、印伝も重たいと思われている方が多いんです。ですが実際に持ってみると『すごい軽いですね。革とは思えない。』と言ってくださる方もいます。やはり軽さはずっと持ち歩くには重要なことなので、使いやすいと思いますよ。」
「あとは耐久性に優れているのも特徴です。もともとは武具や甲冑に使われていた素材で、そういった歴史から見ても耐久性は確かなものなのです。」
革製品はどうしても重たくなりがち。
しかし鹿革は、革とは思えないほど軽いのです。
そして軽いだけでなく、耐久性にも優れています。
古くから武具や甲冑など、軽さと耐久性が求められる用途で使われてきた鹿革。
一度手に取って体感してみてはいかがでしょうか。
\ 日本の歴史が証明する使い心地 /
「浅草前川印傳」人気商品は合切袋とバンブー手提げ
「浅草前川印傳」の人気商品についてお聞きしました。
浅草に店舗を構えているだけあって、下町らしいアイテムが人気なようです。
「合切袋がとても人気です。浅草にお店を構えていることもあり、下町風情のある粋なアイテムを好まれる方がよく来てくださるんです。」
「バンブー手提げも人気があります。ほかの印伝メーカーさんがあまりやっていないので、オリジナリティがあって気に入っていただいています。」
浅草と言えば風情のある下町の風景が思い浮かびます。
そんな風情のある街並みによく似合う、和の趣を持った商品が人気だと言います。
「浅草前川印傳」の商品は、豊富な柄やパッチワークのデザインが個性的。
特に柄に関しては、単なるデザインとしてではなく、そこに込められた思いも楽しんでほしいとのこと。
「うちで使っている柄は、基本的には日本の伝統文様を使っています。伝統文様には一つ一つ意味合いが込められているのです。例えばトンボは前にしか飛ぶことができない、後ろに下がらないことから、勝利を呼び込む”勝ち虫”と言われています。なので勝負事やお仕事が上手くいくと言われているのです。他には麻の葉は厄除けになったりと、一つ一つ意味合いがあるところがユニークな特徴になっています。」
日本の伝統文様には、一つ一つ意味が込められています。
大切な人への贈り物として、その人にぴったりの柄を探してみてはいかがでしょうか。
「パッチワークもやっていて、様々な色が出せて綺麗に作れるので人気があります。手間がかかるものなので、他のメーカーではあまりやっていないと思いますよ。お客様も『見たことない』とおっしゃってくれます。」
「印伝は和装小物に使われることが多いので、地味で暗い印象を持つ方が多いです。そこを父の代で、『印伝という素晴らしい素材を、工夫次第でもっと使ってもらえるようにできるんじゃないか』と考え、斬新な色合いや華やかなデザインの提案が始まりました。」
地味な印象になりがちな和柄を、パッチワークでデザインすることで鮮やかで華やかなものに仕上げています。
これは「浅草前川印傳」ならではの発想なのです。
伝統を守りながらも遊び心があり、一つ一つに職人のこだわりが光る「浅草前川印傳」のアイテムは、店舗または公式オンラインショップで購入することができます。
大切な人への贈り物や自分へのご褒美としてもピッタリなので、ぜひチェックしてみてくださいね。
\ 豊富な柄と鮮やかなパッチワーク /
「浅草前川印傳」印伝の魅力を知るために、まずは手に取ってほしい
「浅草前川印傳」は印伝の良さを活かした商品を作り続けています。
三代目当主の前川来人さんは、そんな印伝の良さをもっと広めていきたいと語っておられました。
「印伝という素材の良さを知ってほしいですね。試しにまずは小物入れから使ってみていただいて、どれだけツヤや柔らかさが良くなっていくのかを実感していただきたいです。もし気に入っていただけたら長財布やカバンなどを使ってみてほしいなと思います。」
「印伝を気に入ってくださった方は『もう印伝以外を使えません』と言ってくれたりもします。なのでまずは1つ使ってもらいたいですね。」
印伝ならではの良さを体感してもらうためには、まず小物入れのような気軽に購入できる商品を使ってみるのがオススメとのこと。
他の革素材にはない軽さと丈夫さ、そして独特のツヤや柄などを、印伝の魅力をぜひ感じてみてくださいね。
\ 手にとって初めてわかる印伝の魅力 /
「浅草前川印傳」まとめ:印伝の魅力をこれからも伝え続ける
最後に「浅草前川印傳」の今後の展望についてお聞きしました。
「現状、中国のキョン革がなかなか入ってこない状態なのですが、素材としては非常に柔らかいという特徴があり、非常に優れています。実はキョンは日本にたくさんいるんです。千葉とかでニュースになっていたりもしますが、捕獲数が全く追いついていないので増えていく一方なのです。」
「キョン革は印伝に使うと相性がいいんです。これだけ日本にキョンがいるので、将来的に日本でキョン革をたくさん使えるようになればいいなと思っています。」
キョンは本来中国南部や台湾に生息する小型のシカ科の仲間です。
日本では特定外来生物に指定されています。
農作物被害など迷惑な動物というイメージがありますが、実はキョン革は印伝にするととても相性がいいとのこと。
将来的に日本でキョン革をたくさん使えうことができれば、印伝の良さをもっと広められることでしょう。
また「浅草前川印傳」として、印伝の良さを広める活動についても語っていただきました。
「もっと印伝の良さを知ってもらいたいですね。例えば店舗を増やすとか、具体的には模索中ですが。自分たちのスタイルは崩さず、色柄のラインナップはそのままに、無理をしない程度で印伝を広めていくための工夫をしていきたいと思っています。」
「浅草前川印傳」のスタイルはそのままに、印伝の良さをもっともっと広めていきたいとのこと。
一点物が多く、意味合いが込められた豊富な柄や華やかなパッチワークが魅力な「浅草前川印傳」の商品。
しかし、使ってこそ初めてわかる印伝の良さもあります。
より多くの人に印伝を手に取ってもらうべく、「浅草前川印傳」の取り組みはこれからも続いていきます。
\ 日本に広めたい、印伝の魅力 /