1971年に創業したコードバンのフィニッシャー「LEDER OGAWA(レーデルオガワ)」。
アニリン染料100%で革を宝石のように仕上げる技術は、「レーデルオガワ」にしかない唯一無二のものです。
ちまたでは「アニリン仕上げのコードバン」や「水染めコードバン」とも呼ばれ親しまれています。
今回は、「有限会社レーデルオガワ」の専務取締役である飛田英樹さんに、インタビューの機会を頂戴しました。
- 1971年 小川三郎氏が「小川染工所」を創業
- 1974年 火災で工場全焼、流山に新工場を設立
- 1990年 「アニリン染めコードバン」の完成
- 1996年 姫路の「新喜皮革」と直接取引を開始
- 2017年 柏市に新工場を設立
- 2021年 オリジナルブランド「UNIQUEON(ユニコーン)」を展開
- YouTubeチャンネルを開設し、情報発信にも注力している
「レーデルオガワ」の歴史とコードバンの魅力をたっぷりお届けします。
ぜひご覧ください。
「レーデルオガワ」の「アニリン染めコードバン」とは?その特徴と比較
「レーデルオガワ」のコードバンには、「アニリン染め」という染色技術が用いられています。
日本の染色技術は、「顔料染め」と「染料染め」、もしくはこの2つを掛け合わせたものが大半です。
その中でも、「水性塗料」「酸性染料」「塩基性染料」と主に3つある水性の塗料・染料のうち、「レーデルオガワ」では「塩基性染料」に特化して「アニリン染め」を行なっています。
彩度が高く、発色がとてもいいことが「塩基性染料」の特徴。
コードバンが本来持つ艶の上に染料をきれいに乗せることで、宝石のような美しい見た目に仕上げることができます。
コードバンには、「アニリン染めコードバン」の他に、「塗料染めコードバン」や「オイルコードバン」があります。
まず、もっともわかりやすいのはランドセルにも使われている「塗料染めコードバン」。
顔料、塗料、ウレタンなどを思いきりコーティングして、再現性が高く安定する色を出せるのが特徴です。
反面、経年劣化で革が剥がれてしまうため、残念ながらエイジングのような味わい方をすることはできません。
お手入れがあまり好きではない方や、ずっと同じ色がいいという方におすすめのコードバンです。
また、「オイルコードバン」は世界で最初にできたコードバンの原型といわれています。
もともと靴用に作られていたという経緯があり、靴用がメインとなっていますが、今では革小物に使われることも。
「オイルコードバン」は、「酸性染料」を使って革ごと液体の中に漬け込むことで中まで色を入れます。
そのため、色落ちがしやすいので、白地のコートやジャケットなどに入れるときは注意が必要です。
「レーデルオガワ」の「オイルコードバン」は、油分を多く入れて仕上げられているため、柔らかくよく伸びるという特徴があります。
「アニリン染めコードバン」は、基本的には革の片側にしか色を乗せない仕上げ方をします。
コードバンは繊維が縦に並んでいるため、横にぐっと倒して圧縮すればするほど、艶が強くなっていく特性が。
瑪瑙(めのう)の玉を用いてコードバンを圧縮させ、グレージング加工によって艶を最大限に引き出します。
そこに100%のアニリン染料を染み込ませることで、透明感と張りのある宝石のようなコードバンができあがるのです。
「アニリン染めコードバン」の場合、色落ちはあまりしません。
しかし、力を加えることによって繊維が開き中の茶色が見えやすくなります。
それに加えて、水を垂らしたときに「ブク」と呼ばれる革の表面が膨れる現象が起こります。
扱いの手軽さでは、「塗料染めコードバン」「オイルコードバン」「アニリン染めコードバン」の順。
艶の鋭さでは、「アニリン染めコードバン」「オイルコードバン」「塗料染めコードバン」の順に挙げられます。
それぞれ、反比例のメリット・デメリットが出てくるのがコードバンならではの特徴です。
\気になる!「アニリン染めコードバン」/
「レーデルオガワ」はどんな会社?創業から受け継がれてきたコードバンへの愛
「レーデルオガワ」は、1971年に創業したコードバン専門のフィニッシャーです。
姫路のタンナー「新喜皮革」からなめされた革を使用し、コードバンの仕上げを行なっています。
創業者である小川三郎さんは、学生時代にコードバン本来の艶に惚れ込み、「これ一本で食べていくぞ」と決意。
「オガワ染工所」として創業し、経営も順調となりつつあった矢先、火災により工場が全焼してしまいます。
しかし、三郎さんはそうした事態に屈することなく、社名を現在の「有限会社レーデルオガワ」と改め再出発。
そして、開業から20年後に、宝石のような輝きを放つ「アニリン染めコードバン」の理論に辿り着いたのです。
三郎さんは、今も多くの方に愛されている「レーデルオガワ」ならではの技術を残し、2012年にこの世を去りました。
三郎さんの逝去から1年後の2013年、飛田さんが「レーデルオガワ」に入社します。
「当初は後継が誰もいなくて、僕が入らなければもう2〜3年でやめようかという話に親族内ではなっていました」
現在、専務取締役として「レーデルオガワ」の経営に携わられている飛田さんは、三郎さんの実のお孫さんです。
飛田さんから見た三郎さんは、とても優しい普通のおじいちゃん。
誕生日には何でもプレゼントを買ってくれたり、家にもよく遊びに来てくれたりと、三郎さんは威厳がありつつも本当に優しい方だったそうです。
もともと経営する側に興味を持っていた飛田さんですが、コードバンについてはそれほど詳しくありませんでした。
革への親しみを感じるようになったのは、「レーデルオガワ」に入社してからのこと。
「グリーンのコードバンがたまたま工場にあって、それを見たときに、めっちゃきれいだなと思ったところからようやく愛情が湧き出したという感じです」
一つの製品との出会いで、飛田さんのコードバンへの愛が一気に深まります。
「祖父の血を継いでるっていうのもあるんですけど、何か遺伝子が反応したんだと思います」
今では、心の中で革に話しかけながら作業をしているという飛田さん。
コードバンへの愛情は、三郎さんから2代目、3代目を経て飛田さんにも受け継がれています。
- 住所:〒277-0922 千葉県柏市大島田2丁目5番地8
- TEL:04-7137-9244
- FAX:04-7137-9245
- Official Website
「レーデルオガワ」の「アニリン染めコードバン」を長く愛用するための秘訣は?
「アニリン染めコードバン」を長く愛用するには、固形のワックスを塗った後に乾拭きすることがポイントです。
コードバンのケアというと難しいイメージがあるかもしれませんが、実はとても簡単。
固形のワックスを塗り、乾拭きすること以外には何も必要ありません。
極論をいうと、オリーブオイルを薄く塗るだけでも問題ないくらい手入れがしやすいのです。
ただし、水分量の多いワックスは使わないほうがいいという注意点があります。
また、撥水効果のあるゲル状のワックスは繊維の間に不純物が詰まって取れなくなってしまうため、なるべく使用を控えるのが望ましいです。
最終的にザラザラした見た目になり、そこから元に戻せなくなってしまったというケースが発生しています。
その点に気をつければ、ケア初心者でもメンテナンスしやすいのがコードバンの特徴。
肌をオイルマッサージするのと同じ理論で、ケアワックスを塗って拭くだけでコードバンを長持ちさせられますよ。
傷に関しては、ヌメの牛革製品を使い込んだときと同じような感覚です。
コードバンは毛が縦に並んでいるので、傷がついてしまったとしても使い込んで膨れていくうちに元に戻ります。
深い傷さえつけなければむしろ目立たなくなるので、あまり神経質にならなくて大丈夫です。
飛田さんが発信されている「レーデルオガワ」の公式YouTubeチャンネルでは、コードバンのメンテナンス方法についてわかりやすく解説されています。
ぜひ覗いてみてくださいね!
\メンテナンス方法を詳しく知りたい/
「レーデルオガワ」のオリジナルブランド「UNIQUEON-ユニコーン-」の魅力
「レーデルオガワ」が展開しているオリジナルブランド「UNIQUEON-ユニコーン-」。
2021年に飛田さんが立ち上げたブランドです。
「ユニコーン」は、革の真ん中に傷が入ってしまい業者に納品できないB級の革を使って製作されています。
もちろん、品質的にはA級の革とまったく変わりありません。
そんな「ユニコーン」の中でも非常に人気なのが、「アトモスフィア」と「メソスフィア」のミドルウォレット。
鮮やかなグラデーションが特徴のとても美しい製品です。
革を半分ずつ別々の色に染め、その真ん中の部分だけを抜いて製作する技法は「レーデルオガワ」ならではのもの。
ミドルウォレットは手のひらに収まるサイズでありながら、収納力にもすぐれています。
キャッシュレス化が進む現代では、最低限の現金やカードを持つ方が増えており、小型財布の人気は高まる一方です。
「ユニコーン」の製品は、銀座の「奥野ビル」3階にある「BRETON(ブルトン)銀座」で購入が可能です。
昭和初期からある「奥野ビル」は独特な雰囲気のある建物で、外国の方にも人気のスポットとして注目を浴びています。
ビルの内部には、アート作品を展示するギャラリーや個性的なショップがずらり。
「自分はどこに来たのだろう?」とびっくりするほどの、非日常的でレトロな空間が広がっています。
「BRETON銀座」の店主も非常に面白い方ですので、観光がてらに立ち寄られてみてはいかがでしょうか。
その他、千葉県の「柏高島屋」にて年に4回ほどポップアップが行なわれています。
インターネットで購入を希望される場合は、「ユニコーン」の公式サイトをどうぞご利用ください。
\他にはどんな商品があるのかな?/
「レーデルオガワ」まとめ:人間ドラマが詰まったコードバン
「レーデルオガワ」の歴史とコードバンの魅力について、お分かりいただけたでしょうか。
「人の心の奥底には、原始時代から使われてきた皮革に対しての何かしらの共通点や興味があると思うんです」
だからこそ、革を使ったことがない人にはぜひ一度触れてほしいと飛田さんはおっしゃっていました。
また、最近は「もの」そのものの価値を見て革を買う方が多くなってきていると実感されているそうです。
そういう方に対して、革のバックボーンを知っていただきたいという想いでYouTubeでの発信を続けられています。
「革には人間くさいドラマみたいなものがあるので、そういうところも見てもらうとめちゃくちゃ深いですよね」
これをきっかけに、「レーデルオガワ」の公式YouTubeを観て、革の知識を深めてみるのもいいかもしれませんね。
実際の作業工程やコードバンのお手入れ術、タンナー突撃取材など、楽しい内容が盛りだくさんですよ。
今回は、「有限会社レーデルオガワ」の専務取締役である飛田英樹さんにインタビューさせていただきました。
お忙しい中貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
\コードバンの奥深さを味わおう/