レザースタジオサードは地元である広島県福山市に店舗を構え、鞄や財布などの革製品を製造・販売しています。
天然藍で革を染めて作られる「福山レザー」は、職人による手染め特有の風合いが特徴で、各メディアで何度も取り上げられています。
今回はレザースタジオサードの代表である三島 進さんにインタビューの機会を頂戴しました。
- 幼少の頃より偉大な父「クラフト工房カーフ代表 三島和久」の下でレザークラフト技術を学ぶ
- 「日本革工芸協会」の工芸展に数々の作品が入選
- 斬新で全く新しい独自の世界観を持つ「オリジナルレザーカービング」を確立
- オリジナルブランド「サード」を立ち上げる
- 生まれ故郷である広島県福山市を愛し、福山市を盛り上げたい一心で、藍染の革「福山レザー」を自社開発
- 2020年3月に開催された革の公募展「インターナショナルレザークラフトエキシビジョン」のバッグ部門にて1位を獲得
革職人としての強いこだわり、そして革業界への熱い想いが詰まったストーリーです。
ぜひご覧ください。
「レザースタジオサード」創業の経緯と店づくりへのこだわり
レザースタジオサード代表の三島さんは、中学生の頃から革を扱う仕事を始めました。
革職人をしていたお父様のもとで働き、厳しくも愛のある指導を受けながら革職人としてのキャリアをスタートさせたのです。
「元々父親が革屋をやっていました。そこで中学生の頃にクラブ活動代わりに働いていたのが始まりです。なのでそこから数えると、革職人歴30年になります。」
お父様の指導を受け、革職人として働き始めた三島さんでしたが、高校卒業後はバンド活動のために上京しました。
そしてその上京という経験が、後のレザースタジオサードの店づくりへ大きく活かされることになるのです。
「バンド活動がきっかけで高校卒業後に東京に行きました。バンドをやる人はみんなそうだと思います(笑)。そこで就職したのが回らないお寿司屋さんだったのですが、そこで客商売の楽しさを学べました。」
回らないお寿司屋さんはカウンターを挟んでお客さんと向き合いながら接客をするスタイルです。
この経験から三島さんは、客商売の醍醐味を知ったとのこと。
「結局忙しくてバンド活動もできず、半年でやめて地元に帰ったのですが、帰った次の日に父親から『おい、ちょっと降りてこい。手伝え。』と。そこから8年間働くことになり、その後独立を果たした。というのが経緯になります。」
お寿司屋さんの仕事が忙しかったこともあり、当初の目的であったバンド活動は満足にできず、半年で地元へと帰ったとのこと。
地元へ帰った翌日にお父様から『おい、ちょっと降りてこい。手伝え。』と言われ、それからお父様のもとで8年間働き、その後独立を果たしました。
「お寿司屋さんでの経験もあって、レザースタジオサードではコーヒーを飲みながらオーダーした作品が出来上がるまでを見られる、職人とお客様の距離が近い店づくりにしました。まさに回らないお寿司屋さんのスタイルですね。お客さんと話しながら一緒に作り上げていくお店をやりたかったのもあり独立しました。」
レザースタジオサードはカウンター越しに職人の仕事を見ることができます。そんな職人とお客様の距離感の近いお店作りは、若き頃の経験が活かされたものなのです。
職人とお客様が一緒にお店を作り上げていく。そんな素敵な空間がレザースタジオサードにはあります。
\ お客様と作り上げるお店づくり /
「レザースタジオサード」下積み時代に父から教わった革の醍醐味
「父親の下では合計して14年働いたのですが、うちの家訓として『革を踏んだら足を折る』というのがあるんです。革は命ですし、素材を踏むなんてありえないという考えのもとで育てていただきました。」
下積み時代にはお父様のもとで14年もの間働いてきた三島さん。
お父様はとても厳しく、仕事に対して熱い情熱を持っていたとのこと。
そんな環境で働いてきた三島さんは、次第に自身も革へ興味を持ち、そして強いこだわりを持つようになりました。
「牛の革を開くと畳一枚分くらいの大きさになるのですが、同じ部位が一つもないし、特徴も違う。この面白さがとても好きなんです。」
牛の革は部位によって特徴が異なり、製品にする際の使い方も違います。
それぞれの部位ごとの特徴を活かした製品づくりをすることで、あらゆる部位を余すことなく使うことができるのです。
「例えば財布の表面はお尻のほうで取って、中のパーツはお腹の部分で取るというようなパーツの取り方をするのですが、このように命をどこも無駄にしないというのが革職人の仕事なんだと私は認識しています。」
革職人は大切な命をいただいて採取した素材を扱う仕事です。
レザースタジオサードは、決して命を無駄にしないことが革職人が果たすべき仕事なのだと、強いこだわりを持って革と向き合っています。
\ 命を無駄にしない革職人の仕事 /
レザースタジオサードを観光地に「東京から来ていただけるお店」へ
インタビューの中で三島さんは、『レザースタジオサードを観光地にするのが私の夢です。』と語っていました。
「レザースタジオサードを観光地にするのが私の夢です。お店が売れてくると『どうやって東京に店を出すか』と考えがちですが、そうではなくて『東京からわざわざ来る店にしたい』という風に思いました。」
東京に店を出すことは考えず、あくまで『東京からわざわざ来る店』を目指す三島さん。
地元である広島県福山市で開いたこのお店を観光地にするんだという、強いこだわりがあるのです。
インタビューでは、『レザースタジオサードの観光地化』に向けた取り組みについて語っていただきました。
「まずは『るるぶ』に載ろうと思いまして、本屋さんでるるぶを探したら、『福山るるぶ』が存在しなかったんです。じゃあ『広島るるぶ』に載ろうと思ったのですが、そもそも福山市が取り上げられていませんでした。これが非常に悔しくて、レザースタジオサードを観光地化する前に福山市を観光地化しなければと思いました。」
レザースタジオサードを観光地にする前に、まず広島県福山市が観光地にならなければと気づいた三島さんは、自分の店で特産品を作ろうと思い立ったのです。
「そこでまずは特産品を作ろうと思いました。そこで福山市の伝統産業である『備後絣』とコラボして、レザーを藍染してみようと思いました。こうして生まれたのが福山レザーです。」
「福山レザーは様々なメディア様に取り上げていただき、地元では知名度が上がりました。ですが私は観光地にしたいと思っているので、なんとかして全国区にしたいと思っています。その中でこうしてレザーストーリー様から取材の依頼が来たりと、ちょっとずつ観光地化に向かって歩んでいるところです。」
福山レザーは福山市の伝統産業である『備後絣』とコラボした、「完全天然藍」「完全手染め」にこだわった商品です。
鮮やかな色と大胆な色むらが特徴で、そのデザインは文字通り「一点もの」。
デニムのような風合いと、レザー独特の経年変化を楽しむことができます。
そんな世界にたった一つの「福山レザー」を、愛着を持って使い続けてみてはいかがでしょうか。
「福山レザー」をはじめとしたレザースタジオサードの商品は、店頭だけでなく公式オンラインショップからも購入することができます。
興味のある方はぜひご覧ください。
\ 天然藍・職人の手染めで作られる「福山レザー」 /
「レザースタジオサード」が語る、革職人としての心構え
革に対する思いが人一倍熱い三島さん。
革職人として、革に対する思いや、革を扱う上での心構えについてお聞きしました。
「革という素材はマンモスを狩っていた時代からあるわけです。マンモスを狩り、お肉を食べ、骨を武器にし、革を剥いで衣類や靴にしたのが革細工の始まりなのです。そんな昔からある素材は木と石と革しかない。そういう意味では、とても価値の高い素材を扱わせてもらっていると思います。」
革という素材はおよそ200万年前の旧石器時代から使われてきたと言われています。
そのころから生き物の命を無駄にしないという考えのもと、革はもちろん骨や肉まで余すことなく人々の暮らしに役立ててきたのです。
そしてその考え方は、モノがあふれる現代においても大切にするべきだと三島さんはおっしゃっていました。
「食肉の副産物だから悪いことやってないよとか、そういう話ではないと私は思います。単純に素材として非常に優れているんです。繊維の絡み具合が素晴らしく、強度の面でも折れ曲がりに強いこともあり、まだ革に代わる素材がないのです。」
古くから人々の暮らしを支え続けた革は、いまだにそれに代わる素材がないほど優れた機能を持っています。
単に環境に優しいから、見た目が美しいからという理由ではなく、素材として優れていることが古くから使い続けられている理由なのです。
「革は昔から歴史や文化に深く根付いていた素材です。そんな価値ある素材を使わせていただいている意識をもって職人として腕を上げないと、素材に対して失礼だと思っています。」
またメンテナンスについて伺ったところ、意外な答えが返ってきました。
「革はメンテナンスするとやっぱり綺麗だなと思うのですが、私は革屋なのでガシガシ使っていた傷なんかが”味”だなと思います。経年劣化ではなく経年変化していくものなので、『育てたいならメンテナンスするな!』と思います。より長く使いたいなら、年に1回クリームを塗るくらいでいいと思いますよ。」
革製品と言えば、こまめにメンテナンスをして色や質感の変化を楽しむものだというイメージを持ちがちですが、三島さんはあえてメンテナンスをしない方が”味”が出るとおっしゃっていました。
ガシガシ使ったことで、ついた傷やシワが”味”となり、自分だけのアイテムへと変わっていく。
レザースタジオサードのアイテムで、自分だけの”相棒”を育ててみてはいかがでしょうか。
\ 人類の暮らしに古くから根付いていた革製品 /
「レザースタジオサード」まとめ:革職人を憧れの仕事にしたい
インタビューの最後に、消費者の方に知っておいてほしいことについてお聞きしました。
すると三島さんから語られたのは、またしても意外なお話でした。
「消費者に知ってほしいことはないです!パッと見てカッコいいと思える、それが一番です。作品から滲み出る風格みたいなものを出したいですね。明らかに他のものと違うオーラを纏わして製品にする。これが職人の仕事だと思います。」
三島さんご自身はあれだけ強いこだわりを持っているにも関わらず、あえてそれを知ってもらう必要はないとのこと。
届けたいのは商品を手に取ったときの感動や、一目見ただけでかっこいいと思えるような風格なのだと語っていただきました。
レザースタジオサードの商品は、強いこだわりや信念をもって作られています。
しかしそれを知らなくても一目見ただけでわかる、他のものとは明らかに違うオーラを纏っているのです。
口で語るのではなく、作品で語る。そんな職人らしさが垣間見えたお話でした。
「観光地化が夢だと言いましたけど、その目的は『革業界を憧れの職種にしたい』からなんです。まずは業界としてしっかり儲かる業界にしなければいけない、そのためには革業界のブランド力を高めないといけないと思います。だから『財布と言えばレザースタジオサード』みたいな状態まで作りたいのです。それを一言でまとめると『レザースタジオサードの観光地化』ですね。」
レザースタジオサードの観光地化は、『革業界を憧れの職種にする』ためなのだと語った三島さん。
革業界をみんなが憧れる仕事にしたい。子供たちが夢見るお仕事にしたい。
大きな目標を叶えるべく、レザースタジオサードはこれからも極上のレザーアイテムを作り続けていきます。
\ 革職人を夢のある仕事にするために /