「雨ザラシ工房」は群馬県高崎市に工房兼ショップを構え、ハンドメイドにこだわった革製品を製造・販売しています。
オリジナル商品「くりがま」や「ランドセルキット」など、様々な商品を生み出しています。
今回は、「雨ザラシ工房」の小野里健一さんにインタビューの機会をいただきました。
- 高校生の頃から革製品を愛する
- 建築会社に就職するも、2年で退職し革業界へ
- 革専門店で修理業務を18年ほど勤める
- 退職後、「雨ザラシ工房」を立ちあげる
「ランドセルキット」に込められた思いや、人気商品「くりがま」誕生の経緯を知ることができるストーリーです。
ぜひご覧ください。
「雨ザラシ工房」のルーツは修理畑にあった
「雨ザラシ工房」の小野里健一さんは、高校生の頃から革がお好きだったそう。
しかし革の仕事に就こうとは思っておらず、全く別の業界へ就職したとのこと。
「高校生の頃から革製品が好きでした。革のコートとかが好きだったので、バイトしてお金を貯めて買うこともありましたね。その頃好きだったのがヌメ革で、肌色の革が茶色く変化していくのがすごく新鮮で、それが面白いなと思ったのが革との出会いです。でもまさか自分が革業界に進むと思わず、そのまま建築会社に就職したんです。その後、仕事が合わずに2年足らずで退職してしまうんですが、その時に僕がよく通っていた革専門店の社長に『会社辞めちゃうんです』って話をしたんです。そしたら『うちで働いてみない?』という形になりまして。」
「そこは販売のみの会社だったんですが、新しく修理部門を立ち上げるにあたって『小野里くん、できるかね』と。僕も手先が不器用というわけではなかったので『やってみたいです』という形で引き受けました。それで20歳くらいの頃に革の世界に飛び込んだんです。そこから都内のクラフト教室に通わせていただいて、型紙の作り方や縫製のやり方を学びました。修理については、社長から修理を教えていただけるわけじゃないので、独学というか、お客様に怒られながら覚えましたね。」
思いがけないきっかけで革業界へ飛び込んだ小野里さん。
はじめは作り手としてではなく、修理担当という形で働いていました。
「社長からは、修理はとりあえずなんでも受けろ、断るな。と言われていたので、とりあえずなんでも受けました。そこで商品を分解して、構造を理解したり縫製を理解したりしてお客様に鍛えてもらいましたね。修理畑と言ってもいいかもしれないですよね。もともと修理から始まって、ものづくりの方にだんだん移行していった形です。
社長からの指示で、修理業務をなんでもこなしていた小野里さん。
そのおかげもあって、革製品の構造や縫製を理解していったとのこと。
「その会社には18年くらい勤めました。でもちょっと長く居すぎたなと思って、2016年に今の『雨ザラシ工房』を立ち上げました。その時は『雨ザラシ工房』として自分の作品の販売はしてましたが、メインは修理でご飯食べていこうと思っていました。でもおかげさまで自分の商品がだんだん売り上げが立つようになってきたんです。」
「両方やっていくのは体力的につらいんです。どちらかを切り離さないと思って、まさかやめるとは思っていなかった修理の方を切り離しました。オーダーメイドもやめて、作品の販売一本という形になりました。」
修理畑ともいえるような経歴を持つ小野里さん。
「雨ザラシ」を立ち上げてからは、もともと本業としていた修理をやめて、ものづくりに専念することになりした。
\ 修理畑から生まれた「雨ザラシ工房」 /
「雨ザラシ工房」の”ランドセルキット”は、唯一無二の体験を提供する
「雨ザラシ工房」では「手作りランドセルキット conote」という商品を販売しています。
お客様ご自身でランドセルを手作りできるキットになっており、全ての工程を自分で行う「コノテ ベーシック」と、簡単な工程のみを行う「コノテ プラス」があります。
もちろん、職人によるオールハンドメイドの完成品である「コノテ アルチザン」も販売されています。
「ランドセルキットは、構想としては自分が独立するずっと前からありました。キット販売ができたらいいなとずっと思っていたんです。でも費用や時間や手間が結構かかるなと思っていたので、個人では難しいなと思っていました。」
「独立してから2年後に、『LEXUS NEW TAKUMI PROJECT』というものづくりの企画がありまして、LEXUS(レクサス)が我々のようなものづくりをしている作家やデザイナーが世界に羽ばたいていけるようにバックアップしようというものでした。2016年から2018年まで続いた企画だったのですが、その最後の年に群馬県の代表として選んでいただいたんです。」
「そこでランドセルキットの企画がスタートしました。この『LEXUS NEW TAKUMI PROJECT』は全国から50人集められるんですけど、その中で4人しかもらえない『注目の匠』というのにも選んでいただけました。全国に発信というわけにはいかなかったのですが、LEXUSと地方紙が組んで、地元の新聞では大きく取り上げていただくことができました。」
『LEXUS NEW TAKUMI PROJECT』をきっかけに始まったランドセルキットの企画。
今では「雨ザラシ」を代表するような商品になりました。
「ランドセルキットの魅力は、親子の絆や思いを詰められるところですね。自分のために作るのではなく、子どものために作るものは思いが強く乗るし、唯一無二のものになりますよね。おそらくかなり珍しいキットだと思います。大変な手間をかけて完成させないといけないので、ハードルは高いんです。でもそこに価値を見出せる方にはすごく刺さる商品だと思います。」
出来上がったものを購入するのではなく、自ら手作りすることで完成させなければいけない「conote」。
手作りの工程を経ることでしか得られない、唯一無二の体験、アイテムになるでしょう。
「ランドセルキットには、タイムカプセルのように手紙や写真を入れられる隠しポケットがあります。6年間使ってもらって、卒業式の日に糸をほどいて手紙を出してもらうというイメージで作りました。親から子供へ、あるいは子どもが未来の自分に向けて書いていただけたらいいなと。その思いを馳せながら制作することで、ランドセル自体を買うというよりも、かけがえのない体験を買うことができるようなキットになっています。」
自分のためではなく、子どものために手間をかけて手作りする「conote」。
親にとっても子どもにとっても、かけがえのないランドセルになります。
\ 子どもへ贈る”もの”と”思い” /
「雨ザラシ工房」の人気商品”くりがま”誕生秘話
「雨ザラシ工房」の人気商品「くりがま」。
一目見ただけで「かわいい!」と感じるデザインが特徴なアイテムです。
そんな「くりがま」の誕生の経緯をお聞きしました。
「もともと、がま口を作るのが苦手だったんです。すごく苦手意識が強かったんですけど、がま口の商品は作りたいなとずっと思っていて。その苦手意識を克服するために何か一つ作ってみようと考えたんです。自分はイメージを具現化できるタイプではないので、手元で色々試しながら少しずつものができていくタイプなんです。そうやって色々やっていると、意図せず栗っぽいものができたんです。これもうちょっと完成度を高くしたら、まさしく栗になると思って。そこから試行錯誤を繰り返し、今の形になりました。本当に偶然に近い形で生まれた商品になりますね。」
「はじめはレギュラーサイズとミニサイズの展開だったのですが、お客様からのご要望で大きなサイズのものを作ったんです。そしたらこれが大変ご好評をいただいて、イベントでもほぼ完売になるくらい人気になりました。皆さんに愛されている商品ですね。」
栗をモチーフに作られたがま口の「くりがま」。
可愛らしいデザインとシンプルなつくりが、多くの人から愛される理由でしょう。
「『雨ザラシ工房』にはオンラインショップがないので、『雨ザラシ工房』の商品を購入される際は、イベントに来ていただくか実店舗に来ていただくかになります。あるいはメールやSNSのメッセージなどでやり取りしながらであればお求めいただけます。」
「雨ザラシ工房」のアイテムは、イベントや実店舗にて購入できますよ。
また、気になる方は公式サイトのお問い合わせフォームの他、「雨ザラシ工房」InstagramのDMからお気軽にお問い合わせください。
イベントやワークショップについては、「雨ザラシ工房」Instagramで発信されていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
- 住所:〒370-0078 群馬県高崎市上小鳥町432-1
- TEL&FAX:027-364-3648
- Official Website:
「雨ザラシ工房」のこだわり。細部にわたる試行錯誤の先に”しっくり感”がある。
「雨ザラシ工房」のものづくりは、どのようなこだわりを持ってなされているのか。
インタビューの中で小野里さんにお聞きしました。
「『収まり』という言葉があるんですが、それを大切にしています。うまく寸法内に収めるということももちろんですが、全体の縦横の比率であったり、触ったときの厚みとかもそうですね。そういう本当に些細なことの繰り返しと積み重ねで、可愛さが生まれたり、手に取ったときのしっくり感が生まれると思います。」
よく作りこまれた作品は、不思議と手に取った瞬間に”しっくり感”を感じるもの。
その”しっくり感”を出すためには、細部にわたる試行錯誤の積み重ねが必要なのだと語っておられました。
「そういった細かいこだわりは作り手じゃない方にはなかなか伝わらないんです。でも手を抜くとわかっちゃう。適当に作ったものは、やっぱり適当なものにしか見えないんです。」
細かいところをこだわり抜き、たとえそのこだわりがお客様に伝わらなかったとしても、妥協することはない。
「雨ザラシ工房」のものづくりは、そんな信念のもと行われています。
\ ”しっくり感”は、度重なる試行錯誤の証 /
「雨ザラシ工房」まとめ:ものがあふれる時代だから、長く使いたくなるものを。
インタビューの最後、小野里さんにものづくりに対する思いについてお聞きしました。
「作家としてものづくりをしているので、流れ作業ではなく、一点一点気持ちを込めながらものづくりができます。なので手に取った方が愛着を持って、長く使いたくなるようにと思いを込めているんです。手に取った人が幸せになってくれたらいいなという気持ちを込められるのは、やっぱりすごく良いことだと思いますね。」
「今はものがあふれている時代なんですが、そんな中で自分たちが作るような手作業ならではのちょっとした歪んだところとか、そういうニュアンスを気に入ってくれる人のために、これからもものづくりを続けていきたいなと思っています。」
ものがあふれる時代の中で、長く使い続けられるものを手に取ってほしい。
機械で作られた完璧なものではなく、手作業で作られた人の温かみを感じられるものを手に取ってほしい。
そんな思いを込めて、「雨ザラシ工房」のものづくりはこれからも続いてきます。
\ 長く愛着を持って使い続けてほしい /