1982年の創業から、鞄を中心に革製品の製造と販売を行ってきた「鞄いたがき(以下、いたがき)」。
「タンニンなめし」にこだわった革を使用し、昔からの技術や製法を大切にしながら、今日に至るまでものづくりを続けています。
今回は「株式会社いたがき」の代表取締役会長である板垣 江美さんにインタビューの機会を頂戴しました。
- 1950年 創業者 板垣英三さんが八木廉太郎鞄工房へ奉公に入り、鞄づくりの修行を始める
- 1954年 奉公後、家族と共に三協鞄製所を創業
- 1964年 エース㈱に依頼されて自社を辞め、同社 小田原工場に勤務
- 1970年 工場移転のため、初めて北海道赤平市を訪れる
- 1976年 一家5人で赤平市に移り住む
- 1982年 「株式会社いたがき」 創業
- 現在に至るまで一貫して、タンニンなめし革を使った革製品を製造・販売している
伝統とこだわりを大切にしながら革製品を作る「いたがき」の魅力満載のストーリーです。
ぜひご覧ください。
「いたがき」が生まれた理由「この仕事を日本に残したい」
「株式会社いたがき」は1982年に創業者である板垣 英三さんによって創業されました。
「父は生粋の鞄職人で、15歳からこの仕事を始めました。」
創業者である板垣 英三さんは15歳の時、東京下町の鞄職人「八木廉太郎氏」に丁稚奉公に入りました。
高い技術と経験を持った職人が最高のものづくりをする 。そんな貴重な環境の中、鞄職人として修業を重ねていったのです。
そんな中、日本は高度経済成長期の真っただ中へと進みます。
質の高いものを作ることよりも、どれだけ早く多くのものを生産できるかということが重視された時代で、「タンニンなめしの革の鞄づくりという仕事を日本に残したい」という思いが生まれ、「いたがき」が創業されました。
「高度経済成長期で、ものづくり文化というのがどんどん失われていくような時代だったので、この仕事をこの日本に残さなければならないという、職人としてのとても大きな使命感もありました。」
創業以来「いたがき」は、創業者である板垣 英三さんが師匠より受け継いだ技術や職人魂を貫いて商品を作り続けています。
質より量が求められた高度経済成長期の時代から、ビニールや合成皮革など様々な素材が存在する現代まで、変わらない思いで革製品を作り続けているのです。
\ 時代が変わっても変わらないものづくり/
「いたがき」が自信と誇りを持つ「タンニンなめし革」の特徴
「いたがき」製品は全て、タンニンなめしの革を使用して作られています。
タンニンなめしの革は植物性のタンニンでなめされているため、身体や環境にとても優しいのが特徴です。
「タンニンでなめされた革は自然になめされているので身体にとても優しいです。当時のドクターバッグやランドセルがタンニンなめしの革で作られていたのは、身体に優しい素材だからだとよく話をしていました。」
革をなめすには主に「タンニンなめし」と「クロムなめし」という2つの方法があります。
「クロムなめし」で作られる革は軽くて柔らかいという特徴があります。またなめすのに必要な時間が短く、現在流通している革の製品の多くは、「クロムなめし」の革で作られています。
それに対して「タンニンなめし」は手間も時間もかかります。ですが「タンニンなめし」で作られた革は初めは固いものの、使い込むごとに革が馴染んで、風合いがよくなり独特の艶も出てくるのです。
「タンニンなめしの革の良さは丈夫で長持ちするというところ。忍耐強く使っていると型崩れせずに革が馴染んできます。出来上がったときが一番いい状態というわけではなく、一番いい状態にするには使い込まないとダメ。そんな秘められた良さがあるのがタンニンなめしの革なんです。」
硬くてずっしりとしたタンニンなめし革は、長い間使い込むことでより良い状態に変化していきます。
忍耐強く使うことで自分だけの風合いを作り出すことができるのが、タンニンなめし革の魅力なのです。
「いたがき」の人気商品「鞍ショルダー」の魅力
「いたがき」の人気商品の「鞍ショルダー」。
馬具の「鞍」がもつ美しいフォルムをショルダーバッグのデザインに落とし込んだ、立体的で洗練された作りになっています。
「タンニンなめしの良さを世の中に広めたいという父の思いもあり、そんな思いを形にしたのが『いたがき』を代表する『鞍ショルダー』なんです。」
「鞍ショルダー」は「いたがき」第一作目の鞄です。
「いたがき」のものづくりへの信念や、タンニンなめしの革を広めたいという思い、北海道という土地に対する思いなどが込められた、「いたがき」にとって大きな意味のある一品になっています。
「鞍シリーズがタンニンなめしの革を知るきっかけになると嬉しいです。鞍の形はタンニンなめしの革でしか表現できないものなので、口で説明するよりも実際に見たり手で触ったりすることで、もっと鞍の形や素材の良さが伝わると思います。」
また「いたがき」で取り扱うお財布の中には、紅白のひもで結ばれた五円玉が入れられているのも特徴です。
「昔は、財布を新調するときに紅白のリボンで結んだ五円玉を入れるのが当たり前のことだったようです。いたがきの中では特別なことではなく、今でも昔からのしきたりや考え方をそのまま受け継いでいるんです。」
「いたがき」では「鞍ショルダー」に代表されるような商品のデザイン、さらに革の製法や昔からのしきたりなどを大切に受け継いでいます。
単に便利なものを作るのではなく、人間だからできる手間のかかる作業や温かいおもてなしの心を忘れずに仕事をしているのです。
「いたがき」の商品は、公式オンラインショップや全国に6店舗ある直営店で購入することができます。
興味のある方はぜひチェックしてください。
\ 「いたがき」の想いやこだわりが込められた「鞍ショルダー」/
「いたがき」が持つこだわり「素材を大事にして形にする」
「いたがき」では今あるものを大切にするという気持ちを大事にされています。
その気持ちがあるからこそ、手間のかかる作業も惜しまずに行っているのです。
「今あるものを大切にするという気持ちを大事にしています。タンニンなめしの革はなめすのにも、製品にするのにも手間がかかります。その手間をいとわないことであったり素材を大事にすることは、ものづくりの基本だと思います。」
「いたがき」では、「タンニンなめし革」にこだわってものづくりをしています。
それは手間をいとわずに素材を大事にするという、昔から伝えられてきたものづくりの考えを大切にしているからです。
「素材を大事にして形にするということは、技術を持った職人にできる素晴らしい行いです。毎日地味にものづくりに取り組んでいると自然と技が磨かれて、昔から伝わる良いものを長く後世に伝え続けていくことが出来ます。」
人類は古くから皮革という素材を、日常の中の様々な用途において形を変えたり加工しながら使ってきました。
動物の命をいただき、その素材を大事にして人間の暮らしに役立てる。
そんな古来から続く人間の行いを、「いたがき」では現代でも変わらず大切にし、後世へと伝え続けていきます。
\ 今も昔も変わらない「素材を大切にする」という行い /
「いたがき」まとめ:使うたび愛着の湧くタンニンなめし革の魅力を伝えたい
最後に「いたがき」代表取締役会長 板垣 江美さんに、お客様に伝えたい思いを語っていただきました。
「物の良さっていうのは、革のように長く持つものであったり、ビニールのように軽くて便利なものであったり様々です。それぞれの素材の良さを知ることができると、生活がより豊かになると思います。」
「いたがき」では「タンニンなめし」の特徴を存分に活かした商品を多く取り扱っています。
重くて硬いというタンニンなめし革の特徴は一見すると欠点のようにも思えますが、長く使い続ける鞄や財布に使うことで大きなメリットとなるのです。
それぞれの素材の良さをよく理解して、どの素材をどのように使うかを考えると、少しずつ生活が豊かになっていくでしょう。
「長く持つ素材と寿命の短い素材、それぞれの特徴を理解することで上手にお付き合いできるようになるので、素材の良さを知る努力はぜひしていただきたいと思います。」
世の中には様々な素材があり、その寿命や性質はそれぞれです。
汚れたり破れたりする可能性のあるものは寿命の短いものを選び、鞄や財布などの愛着を持って長く使い続けたいものは長く持つものを選ぶということが、様々な素材と上手に付き合う一つの方法なのかもしれません。
「いたがき」で取り扱うタンニンなめしの革は、非常に丈夫で長く持つものばかり。
長い時間を共にするアイテムを、ぜひ探してみてください。
今回は「株式会社いたがき」代表取締役会長である板垣 江美さんにインタビューさせていただきました。
お忙しい中貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。