山口産業株式会社の「やさしい革」ってどんな革?消費者として知っておきたいものづくりの裏側を潜入レポート!

山口産業株式会社の「やさしい革」ってどんな革?消費者として知っておきたいものづくりの裏側を潜入レポート!

1938年創業、東京墨田区の「山口産業株式会社」。

「この会社が作る製品を、買いたい。」と心が動かされるほど、このタンナーには魅力があります。

次の100年へ残していきたい、日本のものづくりの姿がここにあります。


今回は、「山口産業株式会社」の代表取締役社長である山口明宏様に、インタビューの機会を頂戴しました。

山口 明宏 様
山口産業株式会社 / 一般社団法人やさしい革 代表取締役社長 山口明宏様
  • 「山口産業株式会社」代表取締役社長
  • 「一般社団法人やさしい革 」代表理事
  • 「全日本ピッグスキンタンナーズ工業組合」理事
  • 「全国皮革振興会」理事
  • 農林水産省ジビエ利活用コーディネーター

私たち”消費者”が知っておくべき情報の詰まったインタビューレポートです。

ぜひ最後までご覧ください。

目次

山口産業株式会社はどんな革を作っているの?「ラセッテーレザー」の魅力を紹介

一般社団法人やさしい革

山口産業株式会社がメインで製造しているのは、「植物タンニン鞣し」の豚革(=ラセッテーレザー)です。

やさしい革 Web Shop」から個人でも購入することができる皮革ですが、その質の高さは一級品です。

フランスの有名メゾンや、無印良品、IDEE、genten、セイコー、その他多数の有名ブランドの革製品に長年使われ続けています。

これほど選ばれる秘密は、素材としての革の魅力だけにとどまりません。

原料となる豚の皮は、フランスのメゾンと共同で調査し、厳格な動物福祉の基準をクリアした養豚場からのみ仕入れます。

食用豚の副産物として出た皮に、環境にも鞣職人にもやさしい「植物タンニン鞣し」を施します。

自然な原料を使って製造された革は、赤ちゃんの手に触れても安心。

生産効率や利益を度外視して、徹底して本質から「やさしい革」を作ることにこだわり続けています。

だからこそ、「山口産業株式会社」の革は高い評価を得ているのです。

\「やさしい革」をもっと知る/

山口産業株式会社はどんな会社?

山口産業株式会社

「皮革製造に携わっていると、たくさんの問題に直面する」とおっしゃる山口様。

ご自身も朝4時から革工場に立たれる鞣し職人でありながら、多数のプロジェクトに取り組まれています。

JICA民間連携事業として、モンゴルやコロンビアなどの「クロム鞣し」による環境汚染対策のため、「植物タンニン鞣し」の技術提供を行っているのもその一つ。

現地の経済発展のため、商品化やクラウドファンディングのサポートまでボランティアで尽力されています。

山口産業株式会社 / 一般社団法人やさしい革

他には、小売業と連携してオリジナル商品を作り、均一化している市場での差別化を図ったり、一般消費者へ向けて蔦屋書店でのセミナーイベントを開催したり。

生産者の想いをダイレクトに消費者へ伝えることで、弱体化していると言われる皮革業界・アパレル業界の再生を目指します。

そんな山口産業株式会社では、どなたでも無料で「革工場」や、併設する墨田区認定「やさしい革の博物館」を見学できます。

山口産業株式会社の鞣し機械

また、革作家さんのイベントやワークショップを開く場として、無料でスペースの貸出もされています。

山口産業株式会社 / 一般社団法人やさしい革
山口産業株式会社 / 一般社団法人やさしい革

「たまたま同じタイミングで見学に来た人同士で仲良くなって、そこからビジネスが始まったりもする」こともあるほど、オープンで温かい雰囲気があり、地元の学校の工場見学としても人気なのだとか。

ご興味のある方は、イベント開催カレンダーをご確認の上、予約なさってくださいね。

山口産業株式会社の会社情報
山口産業株式会社 社内風景

山口産業株式会社の「ラセッテーレザー」を作る工程を紹介

山口産業株式会社 / 一般社団法人やさしい革

「やさしい革」の原料となる豚皮は、毛のついた原皮のまま革工場へ届きます。

薬剤に漬けて脱毛処理を施した後、丁寧な下処理を行います。

石灰を入れてコラーゲンタンパク質の繊維質を緩めることで、雑菌が取り除かれ、皮が柔らかくなります。

この時、皮の裏面を使うスエードを作るのか、表面を使うフルグレインレザーを作るのかによって処理工程を変化させます。

多くのタンナーでは省かれてしまう面倒な工程にもきちんと手間をかけていることで、非常に綺麗な質感の革に仕上がるのです。

山口産業株式会社 / 一般社団法人やさしい革

「植物タンニン鞣し」の鞣材の原料となるのは、南アフリカやオーストラリア原産のミモザアカシアの樹皮から抽出された成分です。

鞣された後、メタル・フリーの環境にやさしい染料で染められます。

深みのある美しい色に染められた革は、厳しい検品を受けます。

そうして次の作り手のもとに渡り、バッグや財布、ソファなどさまざまな製品へ生まれ変わっていきます。

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山口産業株式会社の地球環境保全への取り組み

「山口産業株式会社」は、元々はクロム鞣しが得意なタンナーでした。

先代の頃から、当時には珍しく、排水の再利用を徹底するなど環境問題に真摯に取り組んできました。

とはいえ、東京都条例では工場排水中のクロム含有量に厳しい規制があったり、使い終わった革製品がゴミとして燃やされてしまうと有害ガスが発生するなど、クロムレザーには課題は多いのが現実です。

そこで1995年の代替わりと同時に、得意としていたクロム鞣しを一切やめ、植物タンニン鞣しのみに移行しました。

2008年から開始したのは「MATAGIプロジェクト」。

山口産業株式会社 / 一般社団法人やさしい革

日本中で広がる鳥獣被害対策として、駆除されたシカやイノシシの皮の鞣し加工を受け付けています。

野生のシカやイノシシは、畜産による牛皮や豚皮とは異なり、野生動物の獣皮は個体差が大きく供給も不安定で、非常に扱いが難しいことで知られています。

それでもいただいた動物の命を最後まで利活用するため、新たなものづくり産業としての取り組みが進められています。

山口産業株式会社まとめ:「やさしい革」で次世代への架け橋に

山口産業株式会社 / 一般社団法人やさしい革

100年先の未来を見据えた、動物福祉・地球環境への取り組みや、途上国への技術協力。

生産者と消費者を繋ぐ、新しい時代の皮革業界のあり方の模索。

「山口産業株式会社」の革が、いかにあらゆる方面へ配慮され、「やさしい革」に仕上がっているか、お分かりいただけたでしょうか。

今回は、山口産業株式会社の代表取締役 山口明宏様に、インタビューさせていただきました。

私たちの生活の中で生まれる「皮革」をどのような思いで「革製品」として自分達が使っていくのか?という、ものづくりの本質に想いを馳せるきっかけになれば幸いです。

お忙しい中貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

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