海外のイメージを持たれる方が多い、タンナー(製革業者)。
日本に、創業100年を超える老舗タンナーがあることは、ご存じでしょうか。
今回の記事では、1911年にスタートした姫路発のタンナー、「株式会社山陽」の魅力を紹介します。
代表取締役 戸田健一様に、インタビューの機会を頂戴し、環境にやさしいオリジナルレザーや、新ブランド「TAANNERR(タァンネリル)」について、わかりやすく解説していただきました。
革好きの人・サステナブルなレザーグッズに興味がある方も必見の、インタビューレポートです。
ぜひ最後までお読みくださいね。
株式会社山陽はどんな会社?特徴と魅力
まずは、兵庫 姫路の老舗タンナー「株式会社山陽」の、特徴と魅力を紹介します。
代表取締役の戸田健一氏に、わかりやすく解説していただきました。
革メーカーとしてスタートした理由
株式会社山陽(以下、山陽)は、1911年にスタートした、兵庫 姫路の皮革メーカーです。
もともとは、「近代的な西洋式の革作りを、国策として行うため」に、スタートしました。
兵庫県姫路市は、千年以上続く、皮革作りの盛んな街。
西洋式の革作りを実現するためにいち早く設立されていた「姫路製革所」を引き継ぐ形で「山陽」はスタートします。
同じ頃に全国の地方財閥により設立された数社のタンナー(製革業者)の一つです。
当時は、政府の主導で、軍事用品や靴・装具に使用する革が作られていたそうですよ。
環境にやさしい革作りのためにしていること
山陽では、環境にやさしい・サステナブルな革作りが行われています。
使用する牛革は、食肉副産物(食肉用で出た、本来廃棄となる皮)。
また、使用する水は、有害物質を除去するなど排水処理を工夫しています。
現在、ヨーロッパの認証「LWG(https://www.leatherworkinggroup.com/)」取得を進めている山陽。
2023年3月末に、審査を受けられる予定だそうです。
LWGとは、レザーワーキンググループの略で、皮革業界の環境保護団体。
革の製造過程において使用する薬剤の安全性・水処理などの環境対策を審査します。
ラグジュアリーブランドや大手スポーツメーカーが取得しているそうですよ。
株式会社山陽で使っているレザーの種類は
山陽は、食肉副産物の牛革を使用して、3種類のレザー(鞣し製法)を製造しています。
「それぞれの特性・ニーズに応じて、適切な革を提供できる体制を取っています。」と、戸田氏。
クロム鞣し
クロム鞣しは、山陽が国内でいち早く導入した製法です。
仕上げ方法で異なる薬品状態を随時チェックし、出来上がりを見極めます。
現在は、世界の8割が、クロム鞣しをほどこされた革を使用しているといわれていますよ。
クロム鞣しは、やわらかさ・高い耐久性が特徴です。
鞄や靴、衣類に幅広く使用されています。
植物タンニン鞣し
植物タンニン鞣しは、天然素材を使用した、より環境にやさしい製法です。
山陽では、世界的に希少なピット槽設備でしっかりとした厚みのある革を実現。
天然素材のブラジル産ミモザを用いて、作られています。
ピットとは、原皮を漬け込む槽のことです。
植物タンニン鞣しで作られるナチュラルなレザーは、美しい経年変化が楽しめますよ。
白革鞣し
白革鞣しは、国内では山陽のみが扱う、環境に配慮した鞣し剤で行われる製法のことです。
山陽の白革鞣しは、姫路で昔から行われていた菜種油と塩で鞣した「白鞣し(しろなめし)革」へのオマージュ。
伝統的な白鞣し革に着想を得て、現代的な手法で作ったのが、白革鞣しです。
「白さを実現しながら人体や環境にやさしい革作りです。」と戸田氏。
白革鞣しで作られるレザーは、純白やパステルカラーの美しい発色が特徴です。
株式会社山陽が消費者に知ってもらいたいレザーの知識は
山陽が消費者に知ってもらいたいレザーの知識は、「革は、食生活で生まれる副産物であること」です。
山陽では、100%食肉副産物の牛革を作ることで、廃棄低減を実施しています。
「環境にやさしい革で日本から世界を変える」ことを使命に、サステナビリティに取り組まれていますよ。
私たちは消費者として、サステナビリティに取り組めるのではないでしょうか。
新ブランドTAANNERR(タァンネリル)の魅力は
ここからは、山陽が立ち上げた新しいブランド、「TAANNERR(タァンネリル)」を紹介します。
TAANNERR(ターンネリル)が立ち上がった理由とかける想い
タンナー(Tanner)のアルファベットを文字って名付けられた、「TAANNERR(タァンネリル)」。
新ブランドが立ち上がった理由とかける想いを、株式会社山陽 代表取締役 戸田健一氏に伺いました。
「TAANNERR(タァンネリル)」を立ち上げた理由・目的は2つあります。
革はサステナブルな素材
1つ目は、「革はサステナブルな素材であることを多くの人に知ってもらいたい」ということ。
SDGsなど、新しいものに目が行きがちな昨今。
古くからある身近な素材である革を、認識し直すことの必要性を感じられたそうです。
「さまざまな素材・製品が出る中で、TAANNERR(タァンネリル)を通じて、革の良さや価値に触れてもらい革を1つの選択肢に。」
との想いが込められていますよ。
姫路の観光資源にしていきたい
2つ目は、姫路城で有名な兵庫県姫路市の、「新たな観光資源にしていきたい」という想いです。
姫路市とたつの市の牛の革の生産量は、日本の約70%を占めています。
姫路発のブランドを立ち上げることで、一般の人への幅広い認知・観光資源化を志向。
姫路の文化や名物は、姫路城だけではないのですね。
私自身にとっても、新たな発見でした!
お財布をご紹介くださる戸田氏。終始和やかにインタビューに応じていただきました。
「タンナーとして、いのちを大切にする文化の再認識や、職人の情熱・想いを感じてほしい。本物を知って、本物を使ってほしい。」
TAANNERR(タァンネリル)では、タンナーとしての熱い想いが込められた革製品が展開されています。
TAANNERR(タァンネリル)の商品とは
TAANNERR(タァンネリル)では、シーズン毎に革のテーマを決めて、アイテムが展開されます。
記念すべき第1弾のテーマは、「フルベジタブルタンニンレザー(植物タンニン鞣し)」。
「美しく堅牢な最高級のピットヌメ」にこだわったアイテムです。
天然の革そのものを感じられるヌメは、経年変化を楽しめる、「皮らしい革」。
展開中のバッグと革小物の特徴は、以下のとおりです。
バッグ
バッグは、「ビジネスバッグ」と「トートバッグ」の2種類で展開されています。
ステアハイドと呼ばれる成牛を使用したバッグは、丈夫さとシンプルなデザインが魅力。
天然のオイルとワックスを染み込ませることで、程良いコシのある絶妙な触感となっており、置いたときにしっかりと自立します。
ビジネスバッグ内装の素材は、やわらかな手触りが心地よい、カーフ(キップよりも赤ちゃん)です。
クラシカルなバッグは、ビジネスからカジュアルまで、さまざまなシーンをスマートに演出します。
革小物
革小物は、5種類で展開されています。
長財布・折り財布・コインケース(小銭入れ)・キーケース・カードケース(名刺入れ)です。
こちらには、現在 山陽でしか作られていないピット槽でフル植物タンニン鞣しをほどこした、キップ(生後6カ月~2年の若牛)の革が使われています。
キップを使って作られるアイテムは、きめ細かな肌質を持っています。
また、ピット槽でゆっくりと植物タンニンでなめされた革は、使うほどに色に深みが増し、つややかにエイジングします。
オリジナリティのある革の風合いを長く楽しめるアイテムは、プレゼントにも最適ですよ。
TAANNERR(タァンネリル)のお手入れ・メンテナンスは?
TAANNERR(タァンネリル)では、すべてのアイテムにクロスとクリームが付属します。
上質な革製品は、お手入れも楽しみの1つですよね。
オリジナルのレザーケアキットでのお手入れで、より長く、愛着をもって使うことができますよ。
TAANNERR(タァンネリル)はどこで買える?
TAANNERR(タァンネリル)は、現在はECサイトで買うことができます。
ですが、今年はポップアップストアの予定があるそうですよ。
実際に見て、手に取って選べるのは、とてもうれしいですね。
東京や大阪以外でも開催できるかもしれないとのことで、楽しみですね。
\ 想いの詰まったレザーブランド /
株式会社山陽まとめ:レザーの可能性を羽ばたかせるサステナブルなブランド・会社
「もっと自由な発想でレザーの可能性を羽ばたかせる」を実現する、姫路発の老舗タンナー「株式会社山陽」。
新ブランド「TAANNERR(タァンネリル)」では、サステナブルなレザーを使ったおしゃれなアイテムが展開されています。
今回は、株式会社山陽 代表取締役 戸田健一様に、インタビューさせていただきました。
終始丁寧に、にこやかに応じてくださった戸田様。
お忙しい中貴重なお時間をいただき、改めまして、ありがとうございました。